アナン
: あや、話があるんだ
あや
: どうしたの?
: あらたまって
アナン
: 大学院時代の友達の坂井、知ってるでしょ?
あや
: ああ、結婚式に来てくれた人ね
アナン
: うん
: 坂井に一緒に会社をやらないかって誘われたんだ
あや
: 今の会社を辞めて、坂井さんと新しい会社を作るってこと?
アナン
: そう
: 日本の医療を受けたいと思っているタイの人たちの手伝いをする会社なんだ
あや
: タイの人たちの手伝いって、医療ツーリズムのこと?
アナン
: うん
: まずはね
: 出資してくれる先も決まったから、当面の資金繰りを心配することなくやっていけると思う
: 将来的には、タイの農村に日本の病院を丸ごと輸出することも視野に入れている
: どう思う?
あや
: アナンはどうしたいの?
アナン
: 僕はチャレンジしたいと思っている
: まあ、君に反対されたら、あきらめざるを得ないけどね
: 会社員である限りは、会社から言われた案件をこなさなければならない
: でも僕は、自分だからこそできる仕事をこの手でやってみたい
: 自分がタイや日本の人の役に立っているということを実感したいんだ
あや
: わかった
: アナンのことだから、やると決めたら必ずやり遂げるだろうしね
: 信じることにする
: 私も通訳者として独り立ちするまでアナンに支えてもらったわけだから、今度は私が支える
アナン
: ありがとう
あや
: ところで、一つお願いがあるんだけど
アナン
: どんなこと?
あや
: 私にも手伝わせて
アナン
: 手伝わせてって……
あや
: タイからのお客さんを私が通訳する
アナン
: それは考えてなかったな
あや
: 私にもできることがあるのに、黙って見ているなんて……
: 手伝わないではいられないよ
: 来週中にも坂井さんをうちに呼んで、三人で相談しましょう
アナン
: そんな急に……
あや
: さあ、これから忙しくなるよ