章4-第1

章4-第1

 

聴:

 

 

ウシになったお坊さん

 

むかしむかし、あるところに、とてもやさしいお百姓(ひゃくしょう)さんがいました。

 そのお百姓さんの家に、ある日のタ方、弘法大師(こうぼうたいし)という旅のお坊さんがやって来て言いました。
「すまんが、今夜一晩泊めてください」
 でもお百姓さんはひどい貧乏なので、お坊さんに食べてもらうご飯も寝るためのふとんもありません。
 困ったお百姓さんは、お坊さんに言いました。
「お坊さまに泊まっていただくのはうれしいが、こんな汚いところにお坊さんを泊めては、ばちが当たってしまいます」
「いいや、汚いなんてとんでもない。夜つゆさえしのげればいいので、どこでもいいから泊めてください」
 そこまで言われては、断る事が出来ません。
「まあ、それならどうぞ、泊まってください」
 お百姓さんはお坊さんを家に入れると、むしたイモをお坊さんに出しました。
「こんな物しかありませんが、よかったら召し上がってください」
「こいつはありがたい。わたしはイモが大好きでな」
 お坊さんはおいしそうにイモを食べると、ゴロリと横になってすぐに寝てしまいました。
 それを見たお百姓さんは、あきれながらもお坊さんに一枚しかないボロぶとんをかけてあげました。
(やれやれ、困ったお坊さんだ。ご飯を食べてすぐ横になると、ウシになってしまうのに)
 お百姓さんがそう思って見ていると、何とお坊さんの頭からニョキニョキと角が生えて来て、お坊さんが本当のウシになってしまったのです。
「お坊さん! 大変です! お坊さん! 起きてください!」
 お百姓さんがビックリしてお坊さんを起こすと、ウシになったお坊さんが言いました。
「わたしはもう、人間に戻れない。どうかわたしを町へ連れて行って、売ってください」
「そんな! お坊さんを売るなんて、とんでもない!」
「良いのです。翌朝、町へ行きましょう」

 そして朝になると、ウシはさっさと起きあがって外へ出ました。
「さあ、一緒に行きましょう。わたしを売ったお金で、何でも好きな物を買ってください」
「し、しかし・・・」
「さあ、早く」
 お百姓さんが仕方なく行くと、ちょうど向こう側からウシ買いがやって来ました。
 ウシ買いはウシを見ると、感心して言いました。
「これは立派なウシだ。ぜひ、わしに売ってくだされ」
 そしてウシ買いは、お百姓さんにたくさんのお金を渡しました。
 ウシになったお坊さんは、お百姓を見てうなずくと、そのままひかれて行きました。

 さて、この事を聞いた隣のお金持ちが、
(おれも一つ、旅のお坊さんを家に泊めて金もうけをしてみよう)
と、思い、お坊さんが来るのを毎日待っていました。
 するとある日のタ方、旅のお坊さんが通りかかりました。
 お金持ちは、あわててお坊さんのそばへ行くと、
「これは、お坊さま。
 長旅で、さぞお疲れでございましょう。
 ささっ、わたしのところへ泊まってください。ぜひとも、ぜひとも」
と、言って、無理矢理家に連れて来てたくさんのごちそうを食べさせると、すぐに立派なふとんをひいて寝かせました。
 ところがいつまでたっても、お坊さんはウシになりません。
「おかしいな。早くウシになれ。ウシになれ、ウシになれ」
と、言っているうちに、何と自分の頭から角が生えて来て、お金持ちはウシになってしまったのです。
 次の日、お坊さんはこのウシを連れて、どこかへ消えてしまったという事です。


 

おしまい

 

ふりがな

 

聴: 

 

 

ウシになったお坊さん

 

むかしむかし、あるところに、とてもやさしいお百姓ひゃくしょう(ひゃくしょう)さんがいました。
 そのお
百姓ひゃくしょうさんのいえに、あるのタかた弘法大師こうぼうだいし(こうぼうたいし)というたびのおぼうさんがやっていました。
「すまんが、
今夜こんやいちばんめてください」
 でもお
百姓ひゃくしょうさんはひどい貧乏びんぼうなので、おぼうさんにべてもらうごはんるためのふとんもありません。
 
こまったお百姓ひゃくしょうさんは、おぼうさんにいました。
「お
ぼうさまにまっていただくのはうれしいが、こんなきたないところにおぼうさんをめては、ばちがたってしまいます」
「いいや、
きたないなんてとんでもない。よるつゆさえしのげればいいので、どこでもいいからめてください」
 そこまで
われては、ことわこと出来できません。
「まあ、それならどうぞ、
まってください」
 お
百姓ひゃくしょうさんはおぼうさんをいえれると、むしたイモをおぼうさんにしました。
「こんな
ぶつしかありませんが、よかったらがってください」
「こいつはありがたい。わたしはイモが
大好だいすきでな」
 お
ぼうさんはおいしそうにイモをべると、ゴロリとよこになってすぐにてしまいました。
 それを
たお百姓ひゃくしょうさんは、あきれながらもおぼうさんにいちまいしかないボロぶとんをかけてあげました。
(やれやれ、
こまったおぼうさんだ。ごはんべてすぐよこになると、ウシになってしまうのに)
 お
百姓ひゃくしょうさんがそうおもってていると、なんとおぼうさんのあたまからニョキニョキとかくえてて、おぼうさんが本当ほんとうのウシになってしまったのです。
「お
ぼうさん! 大変たいへんです! おぼうさん! きてください!」
 お
百姓ひゃくしょうさんがビックリしておぼうさんをこすと、ウシになったおぼうさんがいました。
「わたしはもう、
人間にんげんもどれない。どうかわたしをまちれてって、ってください」
「そんな! お
ぼうさんをるなんて、とんでもない!」
いのです。翌朝よくあさまちきましょう」

 そして
あさになると、ウシはさっさときあがってそとました。
「さあ、
一緒いっしょきましょう。わたしをったおかねで、なにでもきなものってください」
「し、しかし・・・」
「さあ、
はやく」
 お
百姓ひゃくしょうさんが仕方しかたなくくと、ちょうどこうがわからウシいがやってました。
 ウシ
いはウシをると、感心かんしんしていました。
「これは
立派りっぱなウシだ。ぜひ、わしにってくだされ」
 そしてウシ
いは、お百姓ひゃくしょうさんにたくさんのおかねわたしました。
 ウシになったお
ぼうさんは、お百姓ひゃくしょうてうなずくと、そのままひかれてきました。

 さて、この
こといたとなりのお金持かねもちが、
(おれも
ひとつ、たびのおぼうさんをいえめてかねもうけをしてみよう)
と、
おもい、おぼうさんがるのを毎日まいにちっていました。
 するとある
のタかたたびのおぼうさんがとおりかかりました。
 お
金持かねもちは、あわてておぼうさんのそばへくと、
「これは、お
ぼうさま。
 
長旅ながたびで、さぞおつかれでございましょう。
 ささっ、わたしのところへ
まってください。ぜひとも、ぜひとも」
と、
って、無理矢理むりやりいえれててたくさんのごちそうをべさせると、すぐに立派りっぱなふとんをひいてかせました。
 ところがいつまでたっても、お
ぼうさんはウシになりません。
「おかしいな。
はやくウシになれ。ウシになれ、ウシになれ」
と、
っているうちに、なん自分じぶんあたまからかくえてて、お金持かねもちはウシになってしまったのです。
 
つぎ、おぼうさんはこのウシをれて、どこかへえてしまったということです。

 

おしまい

 
 

 
 
 
 
 
 
 
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