アナン
: 久しぶりに会えてうれしいよ
: 仕事、忙しいんでしょ?
坂井
: うん、相変わらずね
: あまりの忙しさに、彼女に愛想を尽かされて振られたよ
アナン
: そうか……
坂井
: まあそれはともかく、サラちゃんはどう?
: 大きくなった?
アナン
: うん
: もうすぐ3歳だよ
: 大きくなるにつれて、目が離せなくなるね
: 親の心配をよそに歩き回って大変だよ
坂井
: そう
: 成長が楽しみだな
: 実は、今日は仕事のことで相談があって……
アナン
: どうしたの?
坂井
: 突然だけど、二人で起業しないか
アナン
: え!
: 起業?!
坂井
: うん
: 僕の製薬会社のMRとしての経験と、アナンのキャリアを活かして、日本とタイを結ぶ医療コーディネート会社を立ち上げたいんだ
アナン
: 本当に突然だね
: 詳しく話してくれる?
坂井
: 前から考えていたことなんだけどね
: タイの旅行会社と組んで、富裕層を対象にした医療ツーリズムをコーディネートする会社なんだ
: タイから定期的に人間ドックの団体客を受け入れる
: がんが見つかった人や心臓や頭の血管に問題があった人に対しては、日本で最先端の治療が受けられる仕組みを作るんだ
アナン
: そうすると、まずは、人間ドックつきの観光ツアーをタイの旅行会社に提案しなければならないね
: 僕がそれをするってことだね
坂井
: そういうこと
: 受け入れ病院の選定は僕がやる
: もちろんアナンには、旅行会社との交渉とか、団体客への対応などタイ関係のことはいろいろやってもらいたいと思っている
: つまりこの企画は君なしでは成り立たないんだ
アナン
: 起業にかかる費用はどうするの?
坂井
: いくつかの病院からは出資が期待できそうなんだ
: アナンのほうでも投資家を見つけてくれれば、とても助かるよ
アナン
: そうか
: 少し時間をもらえるかな
: あやと相談してからでないと何も決められないし
坂井
: そうだね
: あやさんにしてみれば、いろいろ不安なこともあるだろうから、よく話してみて
: この仕事は医療を通じて、日本とタイの交流を拡大できる可能性を秘めている
: 意義のあるものだと僕は思っているよ
アナン
: わかった
: あやと二人でよく考えてみるよ