章4-第5

章4-第5

 

聴:

 

 

げんこつのほうび

 

むかしむかし、ある国の殿さまが、

《珍しい物を持って来たら、ほうびをとらせる》
と、おふれを出しました。
 それを聞いた人たちは、珍しい物を持って次々と城へ出かけました。
 でも、色々と珍しい物を持っている殿さまは、
「こんな物、ちっとも珍しくない」
と、みんなを追い返してしまいました。

 さて、この国にカブを専門につくっているお
百姓(ひゃくしょう)さんがいました。
 お百姓さんは大きな大きなカブをつくろうとして、長い間、苦労を重ねてきました。
 そしてその苦労が実って、大きな岩みたいなカブが出来たのです。
「これなら、あの殿さまも見た事がないだろう」
 お百姓さんは近所の人に手伝ってもらって、そのカブを荷車に乗せると城へ運んで行きました。
 ところが城の門番が、
「カブなんて、ちっとも珍しい物ではない」
と、中へ入れてくれません。
「でもこれは、おらが一生懸命に育てたカブです。
 こんな大きなカブは、どこを探しても他にありません。
 一目だけでも、殿さまに見ていただきたいのです」
 お百姓さんがあまりにも頼むので、門番は殿さまに大きなカブの事を話してくれました。
 すると、殿さまは喜んで、
「すぐ、持って来るように」
と、言いました。
 それを聞いた門番は、急いで戻るとお百姓さんに言いました。
「わしのおかげで、どうにか殿さまが見てくださる事になった。わしのおかげでな。・・・いいか、もしほうびをもらったら、わしにも半分寄こせよ。何しろ、わしのおかげなんだからな。わかったな!」
「はい、しょうちしました」
 お百姓さんは、城の庭へ荷車を引いて行きました。
 殿さまは荷車の上のカブを見て、とても目を丸くしました。
「これは珍しいぞ。よくぞここまで、カブを育てたものだ。ほうびをとらすから、何でも欲しい物を言うがよい」
 でも、お百姓さんはほうびよりも、あの門番をこらしめてやろうと思いました。
 そこで、殿さまに訳を話して、
「おらに、げんこつを十個ください」
と、言ったのです。
「よし、よし。そう言う事なら、げんこつをあげよう。もっと近くへ来なさい」
 殿さまは、お百姓さんの頭をやさしく十回叩いて言いました。
「お前は正直者だ。本当のほうびは、あとで届けてやるからな」
「ありがとうございます」
 お百姓さんは喜んで荷車を引くと、城の庭を出ていきました。
 門のところへ来ると、門番が待ちかねた様に言いました。
「どうじゃ。殿さまにほうびを頂いたか?」
「はい、おかげさまで」
「よし。それじゃ約束通り、ほうびの半分をもらおうか」
 門番はお百姓さんの前に、両手を突き出しました。
 そのとたん、お百姓さんはこぶしで、門番の頭を思いっ切り殴りつけました。
「あいた! な、なにをする!」
「おらが殿さまからもらったほうびは、げんこつが十個だ。半分やるから、覚悟しろ!」
 お百姓さんはこぶしをにぎりなおすと、あと四回、門番の頭を殴りつけました。
 これには門番もたまらず、そのままひっくり返ってきぜつしてしまいました。
「ははーん。ざまあみろ」
 気の晴れたお百姓さんは、ニコニコしながら家に帰っていきました。
 そして家に帰ると、すぐに殿さまからのほうびのお金が届きました。
 お百姓さんはそのお金で、村人たちにごちそうをしたという事です。


 

おしまい

 

ふりがな

 

聴: 

 

 

げんこつのほうび

 

むかしむかし、あるくに殿とのさまが、
めずらしいものってたら、ほうびをとらせる》
と、おふれを
しました。
 それを
いたひとたちは、めずらしいものって次々つぎつぎしろかけました。
 でも、
色々いろいろめずらしいものっている殿とのさまは、
「こんな
ぶつ、ちっともめずらしくない」
と、みんなを
かえしてしまいました。

 さて、この
くににカブを専門せんもんにつくっているお百姓ひゃくしょう(ひゃくしょう)さんがいました。
 お
百姓ひゃくしょうさんはおおきなおおきなカブをつくろうとして、なが苦労くろうかさねてきました。
 そしてその
苦労くろうみのって、おおきないわみたいなカブが出来できたのです。
「これなら、あの
殿とのさまもことがないだろう」
 お
百姓ひゃくしょうさんは近所きんじょひと手伝てつだってもらって、そのカブを荷車にぐるませるとしろはこんできました。
 ところが
しろ門番もんばんが、
「カブなんて、ちっとも
めずらしいものではない」
と、
なかれてくれません。
「でもこれは、おらが
一生懸命いっしょうけんめいそだてたカブです。
 こんな
おおきなカブは、どこをさがしてもにありません。
 
一目いちもくだけでも、殿とのさまにていただきたいのです」
 お
百姓ひゃくしょうさんがあまりにもたのむので、門番もんばん殿とのさまにおおきなカブのことはなしてくれました。
 すると、
殿とのさまはよろこんで、
「すぐ、
ってるように」
と、
いました。
 それを
いた門番もんばんは、いそいでもどるとお百姓ひゃくしょうさんにいました。
「わしのおかげで、どうにか
殿とのさまがてくださることになった。わしのおかげでな。・・・いいか、もしほうびをもらったら、わしにも半分はんぶんこせよ。なにしろ、わしのおかげなんだからな。わかったな!」
「はい、しょうちしました」
 お
百姓ひゃくしょうさんは、しろにわ荷車にぐるまいてきました。
 
殿とのさまは荷車にぐるまうえのカブをて、とてもまるくしました。
「これは
めずらしいぞ。よくぞここまで、カブをそだてたものだ。ほうびをとらすから、なにでもしいものうがよい」
 でも、お
百姓ひゃくしょうさんはほうびよりも、あの門番もんばんをこらしめてやろうとおもいました。
 そこで、
殿とのさまにわけはなして、
「おらに、げんこつを
じゅうください」
と、
ったのです。
「よし、よし。そう
ことなら、げんこつをあげよう。もっとちかくへなさい」
 
殿とのさまは、お百姓ひゃくしょうさんのあたまをやさしくじゅうかいたたいていました。
「お
まえ正直しょうじきしゃだ。本当ほんとうのほうびは、あとでとどけてやるからな」
「ありがとうございます」
 お
百姓ひゃくしょうさんはよろこんで荷車にぐるまくと、しろにわていきました。
 
もんのところへると、門番もんばんちかねたよういました。
「どうじゃ。
殿とのさまにほうびをいただいたか?」
「はい、おかげさまで」
「よし。それじゃ
約束やくそくどおり、ほうびの半分はんぶんをもらおうか」
 
門番もんばんはお百姓ひゃくしょうさんのまえに、両手りょうてしました。
 そのとたん、お
百姓ひゃくしょうさんはこぶしで、門番もんばんあたまおもいっなぐりつけました。
「あいた! な、なにをする!」
「おらが
殿とのさまからもらったほうびは、げんこつがじゅうだ。半分はんぶんやるから、覚悟かくごしろ!」
 お
百姓ひゃくしょうさんはこぶしをにぎりなおすと、あとよんかい門番もんばんあたまなぐりつけました。
 これには
門番もんばんもたまらず、そのままひっくりかえってきぜつしてしまいました。
「ははーん。ざまあみろ」
 
れたお百姓ひゃくしょうさんは、ニコニコしながらいえかえっていきました。
 そして
いえかえると、すぐに殿とのさまからのほうびのおかねとどきました。
 お
百姓ひゃくしょうさんはそのおかねで、村人むらびとたちにごちそうをしたということです。

 

おしまい

 
 

 
 
 
 
 
 
 
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